4人が本棚に入れています
本棚に追加
<エピローグ>
数日後
その日、静斗は最後の出勤日を迎えていた
__今日で最後か…ってまぁ別に感動とかはねぇんだけどな
チリンチリン、と来店の合図の鐘がなった
「いらっしゃいませー……ってアンタ…」
「…どうも、ご無沙汰です」
そこにいたのはあの日親友を失った女性だった
_確か倫也が復讐どうのこうの言ってたよな…
「あの…そこの花束をいただけますか?」
「え?あ、あぁ、少々お待ちください」
_……まさか
「……私、復讐とかしないことにしました」
「……なんでだ?あいつのこと、憎くないのか?」
そう言うと彼女は眉を寄せて、やがて苦笑する
「憎いです。あの男のことが
香奈を死に追いやったあいつのことが」
でも、と彼女は続ける
「きっと彼女を苦しめたのは彼だけじゃない、私もなんです
それに、……香奈は優しいから」
復讐なんてきっと望んでない__それだけ言うと彼女は静かに頬笑みを浮かべる
「……そうですか」
彼の頭には倫也が最後に言っていた『部外者』という言葉がよぎり、それしかかける言葉がなかった
彼女は代金を支払い終えると軽く一礼をして店を出ていく
そこで静斗は気づいた
彼女はあの事件から前に進もうとしているのだと
__俺も、動かねぇとな
そう言って静斗は足早に仕事をこなしていった
最初のコメントを投稿しよう!