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「心配するな。
このまま会社の港に入るから」
「いやいやいやっ、私は下ろしてくださいっ」
「なんでだ。
その辺で拾ったと言えばいいだろう」
と猫の子のように言う陽太に、
「着替えたいんでっ。
帰って着替えたいんでっ」
と深月は繰り返した。
「別にそのままでもおかしくないが」
と上から下まで深月を眺めて、陽太は言う。
確かに、ちょっとフォーマルっぽいワンピースにシンプルなジャケットだったので、このまま仕事に行っても、そうおかしくはなかった。
「でもあのっ、途中で拾われたんだとしても、支社長と出勤なんてしたら、おねえさまがたにボコボコにされますからっ」
と深月が強く主張したので、仕方なくといった感じではあったが、神社近くの漁港で降ろしてもらえることになった。
「お前んち、神社のとこなのか?」
「いえいえ。
うちは違うとこにあるんですけど。
昨日、神社に自転車乗っていってた気がするの、で……」
後半、言葉が途切れ途切れになった。
夕べなにがあったんだろうな、と恐ろしくなり。
今朝、目覚めたときのことまで思い出してしまったからだ。
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