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できるだけ、頭の隅に追いやっていたのに。
リアルに思い出すと、支社長と向かい合っていられないから。
は、早く漁港につかないだろうかと思ったのだが、岸まで泳いでいける感じではない。
陽太に言ったら、
「いや、お前、その格好で泳ぐ気か?」
と言われそうだが。
遠泳の練習、嫌がらずにしとくんだった、と思っている間に、陽太が消えていた。
操舵室に行ったようだ。
そちらに行って、チラ、と覗くと、
「入って来い」
と言う。
「お、お邪魔します」
と深月はちょこんと操舵室の隅に立った。
「その辺に座れ」
船はまっすぐ漁港に向かっているようだった。
漁港の左手に見える小島を見ながら、深月は言った。
「ああ、会社が見えてきちゃいますね」
さっきまで、あの島の陰になって会社が見えなかったのだ。
「ゆっくりしたいときに会社が見えるのやだろ」
と陽太が言う。
それであの辺りで停泊してたのか、と深月は笑った。
支社長でも会社見たくないとか思うのかと思って。
だが、船を操縦している陽太を見ていて、深月は気がついた。
「ん?
そういえば、この船、昨夜は酔った状態で運転してたんですか?」
神社に居たとき、陽太はもう呑んでいたはずだった。
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