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「そんなわけないだろう。
誰かが運転したんだろ」
「誰かって、誰ですか?」
と深月は、やはり、船内に誰かがっ、と振り返ったが。
「いや、他に船を動かしてくれる奴が居……」
と言いかけ、陽太は黙る。
なんなんですかっ。
気になるんですけどーっ。
「……確かに。
運転してくれた奴が泳いで帰ったのでない限り、もうひとり居たはずだよな。
まずい相手に弱みを握られたかも」
と呟いている。
いや、誰なんですか、まずい相手ってっ。
怖いんですけどっ、と思っている間に、漁港に着いた。
幸い、今は人気がなく、知っている人にも出くわさなかった。
猫が呑気に、もう朝の仕事を終えた漁船の上であくびをしているのを見かけたくらいだ。
陽太の船を振り返り、ぺこりと頭を下げると、深月はダッシュして漁港から消えた。
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