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そして、
「いつまでも若くて可愛いと思って、呑気にしてたら、あっという間に化粧が乗らなくなるのよ」
と呪いをかけられた。
ちょっとこうるさいところもあるが、まあ、いい先輩だ、と由紀に、まるっと言ったら、どつかれそうなことを思いながら、深月は言った。
「乗せていきましょうか? 金子さん」
この駐車場から深月たちの総務部がある棟まで、ちょっと距離があるからだ。
だが、由紀は、
「結構よ。
あんた、私を乗せた途端に、ぱたっと倒れて、私が漕いで連れてかなきゃいけない気がするから」
と言ってくる。
倒れたら、漕いで連れてってくれるのか、いい人だ……と思いながら、
「じゃ、失礼しますー」
と頭を下げて、また深月は漕ぎ出そうとしたが。
誰かがこちらを睨んでいるのに気がついた。
若い人らしからぬデザインのシルバーのセダンから降りてきた男。
整った顔をしているが、ちょっと冷たそうだし、面白みがないと同期のみんなが言っている。
支社長秘書の杵崎英孝だ。
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