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「私は高岡さんを迎えに行っただけですよ。
高岡さん、泳いで帰れませんからね」
高岡というのは、支社長付きのドライバーなのだが、船も動かせるので、たまに頼むことがあるのだ。
「我々もあそこをたまたま通りかかったんですよ」
と杵崎は言う。
「ちょうど一杯やりに行こうと思ってたんで、ふるまい酒ラッキーな感じだったんですが。
既に出来上がっていた支社長が、一宮を船に乗せたいとか言い出して、高岡さんが船を動かして、私が私のプレジャーボートで高岡さんを迎えに行ったんです」
「す、すまない」
と謝ると、いえいえ、と素っ気なく言った杵崎は、
「時間外勤務ですが、お小遣いはいただきましたから。
その金で二人で呑みに行きました」
と言ってくる。
陽太は思わず、財布の入っている胸元を押さえた。
財布はスーツの内ポケットに入れているので、厚みが出てスーツの形が崩れないよう現金はあまり入れてはいないのだが。
「ずいぶんご機嫌で、弾んでくださいましたよ」
と杵崎が言うので、おそらく、数万は渡したのだろうと思う。
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