理由が必要か?

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 そうだ、あの日――。  酒を呑んで意気投合した深月の手を引き、船に案内……  しようとしたら、深月が桟橋から落っこちて。  ひいいいいっ、この酔っ払い娘っ。  とんだ巫女さんだっ、と引っ張り上げて、船の風呂に連れていった。  で、なかなか風呂から出てこないと思ったら、深月は風呂で寝ていて。  死ぬぞ、莫迦っ、と雪山のようなことを叫びながら、深月をベッドに運び。  此処まで付いて来たんだから、オッケーなんだろう、と思って一緒にベッドに入ったのだが。  深月があまりにも無邪気な顔で寝ていて――  いや、だから、実際のところ、とんでもない酒豪の酔っ払いなんだが。  酒臭いわりに寝顔はあどけなく。  なんとなく、その顔を眺めていたら、ぎゅーっと母親にすがるように抱きついてきたので。  ほんとうに可愛くて。  思わず、子どもにしてやるように、背中をとんとん叩いてやったりとかして。
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