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陽太は夕日を背にしていたので、顔がよく見えず、その姿は、まるでシルエットのようになっている。
そのせいで、ちょうど深月の視線の先にある、がっしりとした肩幅が際立って見えた。
陽太は深月の手を握り言う。
「……一宮。
俺は、あれから、昨夜のことについて、俺なりに考えてみたんだ」
ごくり、と深月が唾を呑み込んだとき、深月の鞄でスマホが鳴った。
だが、話の続きが気になり、陽太を見たまま身構えていると、陽太が、
「出ないのか」
と訊いてくる。
「でっ、出ましょうか?」
と自分のスマホだというのに、不思議なことを言ってしまった。
急いでスマホを見た深月は、
「あれっ? お母さん?」
と声を上げる。
なんだろう。
早くしなさいとかかな。
今日は舞の稽古があるので、早く夕食を食べさせようとイライラしているに違いない。
やばい、怒られるっ、と思ったが、電話がつながった瞬間、母、条子は、
「あんた、おじいちゃんが入院したのよ。
拝殿の階段から落ちて骨折っ」
と叫び出した。
ええーっ、と深月は声を上げる。
「大丈夫なのっ?」
「足以外、ピンピンしてるけど、これは踊れないわねえ。
誰か今から代わりの人探さないと」
と条子は言う。
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