3886人が本棚に入れています
本棚に追加
/485ページ
そこで条子はスピーカーに切り替えたようだ。
「ほら、おじいちゃん、深月が心配してるわよっ」
と言う声が少し遠くなる。
「深月ーっ。
わしは大丈夫じゃーっ」
と祖父、万蔵の声が聞こえてきた。
いつも通りのハリのある声に、ホッとする。
「にしても、困ったわねえ。
今から、トシさんたちがおじいちゃんの代役をどうするか探すみたいだけど。
ともかく、人手が足りないからねえ。
十二年に一度の大祭なのに、ほんとに……。
まあ、ともかく、今日は緊急会議よ」
と言うので、練習はないのかと思ったのだが、
「ちなみに、おじいちゃんは出られなくても、会議があっても、稽古は中止じゃないわよ、早くしなさいっ」
と条子は言ってくる。
小さな街だが、この大祭はテレビなども取材に来る大きな祭りだ。
祭りを見るために、わざわざ遠くの街から帰ってくる人たちも居るので。
中止です、とか縮小化しました、とかいう訳にもいかない。
なにを置いても、稽古は優先するようだ。
最初のコメントを投稿しよう!