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深月は、
「俺の屍を越えていけって感じね」
とうっかり言って、万蔵に、
「わしゃまだ死んどらんっ」
と怒鳴られた。
ともかく、とりあえず、そっちに行くと約束して、電話を切る。
深月が陽太を振り返り、
「すみません。
私、今から病院に……」
と言おうとしたとき、陽太はおのれのスマホから顔を上げ、言ってきた。
「今確認したところによると、病院は海岸沿いだな。
程よく、すぐ側に、たまに利用させてもらう漁港がある」
いや、貴方、なんでそんなあちこちの漁港に顔が利くんですか、と思っていると、
「こっちに異動してきたとき、漁業組合に挨拶に行ったんだ。
そのとき、船と釣りの話で盛り上がったから」
と言ってくる。
そうか。
工場の関係で、漁業組合とは話するよな。
ていうか、支社長自ら出向いてたのか、と思いながら、
「じゃあ、ノリさんとか知ってます?」
と訊くと、陽太は操舵室に向かいながら、
「ああ、定長さんか。
知ってる。
人の来ない釣りポイントを教えてもらった」
と言う。
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