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結局、陽太が忙しそうなので、万蔵は強く頼むようなことはしなかった。
ただ、丁寧に断り、病室を出て行く陽太をすがるような眼差しで見てはいたが。
陽太は廊下から病室を振り返り、
「万蔵さんによろしく言っておいてくれ」
と言ってきた。
「愛するお前の頼みだ。
聞いてやりたいのは、やまやまなんだが。
なかなか時間の都合がつきそうにないからな」
ん? なんだって?
と深月は陽太を見る。
その視線の意図を察し、陽太が言ってきた。
「なんだ。
愛はないのか。
愛もないのに、あんなことするとか、どんな淫乱女だ、お前は」
いや、愛以前にですね。
記憶がないのですよ、支社長。
本当に我々の間になにかあったのでしょうか……、
と今ではちょっと疑っている。
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