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朝から最低最悪だ。
僕は自転車のペダルを力いっぱい踏みつけて、道路へ飛び出した。
「ほら、うちの近くには電車もバスも通ってないでしょう。だから買ったのよ。自転車があれば、えいちゃんが好きなところに行けるでしょ?」
ばあちゃんの甘ったるい声が頭の中で反響する。優しいばあちゃん。優しすぎて、僕には散々な結果となってしまった。
ばあちゃんは、じいちゃんにカブトムシの森のことを相談していた。森の話をしていたのはばあちゃんだったけど、実際に場所を知っているのはじいちゃんらしい。
じいちゃんは、僕に教える気はなかった。困ったばあちゃんは、朝から畑へカブトムシを探しに出ていたようだ。
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