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「でもあれは確かに社長の声でした。秘書の私が聞き間違えるはずがありません。」
高嶺は反論するように言った。
「どういうことなんでしょう…?」
井口は永瀬に意見を求めた。永瀬は少し考えた後、高嶺に尋ねた。
「社長室へは誰でも入れますか?」
「いえ、社長室はオートロックで、社員証でもある専用のカードキーがないと開きません。」
「では森内社長もそのカードキーを持っていたんですね?」
「いえ、社長だけは虹彩認証、つまり自分の瞳で認証を行って社長室へ入られていました。」
「虹彩認証とカードキー…最近社員証をなくした社員はいますか?」
「いえ、おりません。」
「社員証が社員以外の手に渡るようなことは?」
「それも可能性は低いかと。社員証には個人データも含まれておりますので。」
「そうですか…最後に一つだけ。森内社長が誰かに恨まれているというようなことはありましたか?」
「私の知る限りではなかったと思いますが…プライベートまでは私にも分かりかねます。」
永瀬はそこで話を一旦終了させた。
「ありがとうございました。また何か気付いたこと等あれば教えて下さい。」
「分かりました。」
永瀬は井口を連れて秘書室を出た。
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