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「いいんですか!?高嶺が嘘の証言をしている可能性だってあるんですよ!?」  井口は永瀬に食いかかった。 「今、高嶺からはこれ以上の情報は出ないだろう。要点は押さえた。」  永瀬は冷静だった。それにしても、と永瀬は考えた。謎に満ちた事件だ。凶器にも殺害現場にも指紋はほぼない、顔見知りの犯行だとしても出社していたのは被害者と秘書のみ、秘書の証言から外部の者の犯行は不可能だと考えられる、とすれば。 (やはり高嶺綾子の犯行か…?)  しかし女性の力で男の体にあそこまで深く刃物を突き立てることが出来るのか、被害者と高嶺の体格から考えてもそれは難しいだろう。 (だとしたら一体誰が…?)  永瀬は考えを巡らせた。被害者が殺害された後、移動させられた痕跡はなかった、ということは被害者は必然的にあの部屋で椅子に腰掛けたまま殺害されたことになる。高嶺が犯人でないとすると、容疑者は社員の内の誰かであり、被害者を殺害するだけの動機を持った人物。そこで永瀬は呟いた。 「犯人は一度出社して森内を殺害した後再び家に帰ったのか…?」 「え?あ、それも有り得ますね!防犯カメラを確認してみましょう!」  井口はまるで自分が何か決定的な証拠を発見したかのように勇んだ。
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