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 剣について祖母から聞いたばかりの桜子は、話が年下の薫にまで行き渡っていることに驚きを隠せなかった。薫よりも桜子の方がお宮から近い場所に住んでいるというのに。 「おじいちゃんに、そう頼まれたの」  桜子が聞くと、薫は気まずそうに言った。 「本当は桜子さんには知られたくなかったんだ。今は忙しいって聞いていたし」  桜子は憤慨して気色ばんだ。 「何を言ってるのよ。忙しくなんかないわ。薫が見張るなら、私もここを見張る。一人でも人目が多い方がいいでしょ」  薫は少し渋い顔をした。 「絶対そう言うと思った。でも桜子さんは帰った方がいい」 「おじいちゃんが承知しないって言うんでしょう」  薫は、ほんのわずかに微笑んだようだった。 そうしていると、年下には思えない大人びた陰影が口の端にのぼった。 「桜子さんを守るのは、僕の任務の一部でもあるからね」  ーー何、言ってるの。  桜子がそう言葉を返そうとした時、ドッと背中に軽い衝撃が走った。  視界が不意にかすむ。雨の音が一段遠くなる。  それが薫の手刀だと気づいた時には、目の前の風景はすでに暗転し、にじむように何も分からなくなった。
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