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現れたのは、水脈の大蛇の神霊ーー和御魂だった。
知らず、巫女の目から涙があふれだす。
透明なしずくが、ほおをつたっていった。
美しい舞いだった。
巫女が神霊を呼ぶ。
ーー巫女は、『水神の剣の守り手』と呼ばれていた。
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暦も春分を過ぎる頃になると、吹き入る風は日ごとに暖かさを増していくようだった。
裸足の感触が、途端に心地よくなるのもこの頃だ。
冬の間、板敷きの床を踏むのは氷の上に立つような苦行だったが、春から初夏にかけては一気に素足が快くなってくる。
菖蒲の節句を迎える前のこの時期が、桜子は好きだった。それまでに、稽古場にある桜も満開になるのだ。
今年、桜子は数え年で十五になる。
桜子の名の由来が、稽古場の桜の見事さからくることを、幼い時から繰り返し聞かされた。
薄い紅の花弁が一斉に花開く様子は、毎年春が来るたびに人々を魅了する。その艶やかさから、優美な女の子を望まれたのかもしれないが、桜子は祖父の開いた稽古場に幼少から馴染み、体を動かすのが好きな、快活でのびのびした少女だった。
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