1章

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アンがよく理解できないままでいると、前すらろくに見えない雪景色の中に、小さな黒い物体が見える。 「キャス、ちょっといいか、あれは……」 アンが目を()らして、その黒い物体を確認した。 そしてそれは――小さな黒い子羊だった。 「あれはニコと同じ電気仕掛けの羊か?」 アンは、ニコと同じタイプだと思われる羊を見て、両目を大きくしていた。 だが、同じタイプとはいっても、ニコの身体を(おお)う豊かな毛は白い。 しかしアンは、その黒い羊がグレイと関係があるではないかと考える。 それは、アンが幼い頃にグレイからニコを与えられたからだった。 ……あの黒い羊、グレイとなにか関係があるかもしれない。 アンは少しでも手掛かりをと黒い羊に向かっていった。 「アン、危ないッ!」 後ろからキャスの叫ぶ声が聞こえると、アンは突然吹き飛ばされた。 そこには、6メートルはありそうな大きな青い熊が立っていた。 氷熊(アイス・グリズリー)――。 この地域に生息する野生動物で、コンピューター・クロエによって生み出された怪物――合成種キメラよって崩壊した世界に、突如(とつじょ)現れた大型の青い熊。 平均体重は1200キロはある、かなり強暴な獣である。 氷熊(アイス・グリズリー)は、雄たけびをあげて、アンに襲い掛かっていく。     
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