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アンがよく理解できないままでいると、前すらろくに見えない雪景色の中に、小さな黒い物体が見える。
「キャス、ちょっといいか、あれは……」
アンが目を凝らして、その黒い物体を確認した。
そしてそれは――小さな黒い子羊だった。
「あれはニコと同じ電気仕掛けの羊か?」
アンは、ニコと同じタイプだと思われる羊を見て、両目を大きくしていた。
だが、同じタイプとはいっても、ニコの身体を覆う豊かな毛は白い。
しかしアンは、その黒い羊がグレイと関係があるではないかと考える。
それは、アンが幼い頃にグレイからニコを与えられたからだった。
……あの黒い羊、グレイとなにか関係があるかもしれない。
アンは少しでも手掛かりをと黒い羊に向かっていった。
「アン、危ないッ!」
後ろからキャスの叫ぶ声が聞こえると、アンは突然吹き飛ばされた。
そこには、6メートルはありそうな大きな青い熊が立っていた。
氷熊――。
この地域に生息する野生動物で、コンピューター・クロエによって生み出された怪物――合成種キメラよって崩壊した世界に、突如現れた大型の青い熊。
平均体重は1200キロはある、かなり強暴な獣である。
氷熊は、雄たけびをあげて、アンに襲い掛かっていく。
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