1章

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仲間のおかげで生き残ったアンは、その後にグレイとニコと共に国から逃げ出す。 その後もアンは、(いま)だに恐怖に怯えていた。 今は大丈夫でも、いつ自分が仲間たちのように機械化するかわからない。 それを考える夜も眠れない日もあった。 だが、それでもアンは、自らの意思で戦うことを続けている。 「アン、下がっていろ。少々派手にやる」 そう言ったキャスの身体から、水流(すいりゅう)の音が聞こえ、その身を()き通った水が包んでいく。 全身に(まと)った透き通った水が、月の光を()びて青みを()びる。 その姿は大昔の物語に出てくる四大精霊(しだいせいれい)のうち、水を(つかさど)精霊(エレメンタル)――ウンディーネのようだった。 「ここは人気(ひとけ)がないからな、思いっきりやれる」 キャスは、そう言うと手をかざした。 (てのひら)から、津波(つなみ)のような勢いで大量の水が飛び出し、氷熊(アイス・グリズリー)を吹き飛ばした。 キャスは水を操れた。 彼女が18歳という若い年齢でストリング帝国の将軍に選ばれたのは、剣の腕前と聡明さだけではなく、この力があったからだと思われる。 なぜ自然の力を操れるのか?     
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