1章

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その理由は、彼女も、そして風を操れるシックスにもわからない。 吹き飛んだ氷熊(アイス・グリズリー)を追いかけて、アンが機械の右腕を前に出した。 アンの感情と呼応(こおう)するかのように、腕から稲妻(いなづま)(ほとばし)る。 そして、頭部を掴んで電撃を喰らわせると、氷熊(アイス・グリズリー)は焼け焦げ、完全に動かなくなった。 「アン、ケガはないか?」 キャスがその傍へと近寄って来る。 「大丈夫だ、それにしてもキャス。少々じゃなかったのか? ここらの木々が折れてしまっているぞ」 「そう言うな。大技は加減ができないんだ」 「じゃあ、早くコントロールできるようにならなきゃ」 「うぅ……わかっている。しかし、()せんな。お前、そんなに木が好きだったのか?」 キャスの質問に、アンは無愛想に返すと、先ほどの黒い羊のほうを振り向く。 「大事、木々や自然は大事……」 そして、小さく(つぶや)いた。 だが、そこにはもう黒い羊の姿はなかった。
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