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2章
「あの黒い羊は、何だったんだ……」
アンは遠くを見つめながら呟いた。
キャスは、そんなアンを見て、声をかけずらそうにしている。
それは、マナやニコと違い、グレイに関していえば、この雪の大陸に来ているということしか情報がなかったからだった。
少しでもグレイに関する情報がほしい――。
そう考えているだろうアンに、キャスは気を使ってしまい、かける言葉が出てこなかった。
「……先を急ごう。キャスが感じるにシックスがここにいるのなら、そこにマナやニコもいるはずだ」
キャスのほうを振り向いたアンは、ぎこちな笑みを浮かべて言った。
それからキャスが感じるという方向へと進んでいたアンたちは、ガレージテントが並ぶ集落を発見する。
もう空には太陽が昇り、すっかり明るくなっていた頃だった。
「ここからだ、ここからシックスを感じる」
「いや、そんな真顔で言わなくても、このテントを見れば私にもわかるよ」
アンがそう言った理由は、ここに見えるガレージテントは反帝国組織バイオ・ナンバーが使っている物と同じだったからだ。
呆れているアンを見て、キャスが少しムッとした表情になった。
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