1章

2/6
前へ
/246ページ
次へ
「おい、待てって。キャスは将軍だったからわからないかもしれないけど、知らない土地ではまず現在位置の確認を――」 アンが言った通り、キャスは元ストリング帝国の将軍だった。 そして、アンはその国の末端の兵士。 アンから見れば、今のキャスの態度は、世間知らずなお嬢様といった感じに映っているのだろう。 「いや、私にはわかる、わかるんだ。こっちのほうに人がいる」 アンにはよく理解できなかったが、キャスがそんな嘘をつく人物ではないことを知っているので、地図をしまってその後についていく。 キャスは、この目の前もほとんど見えない道を、何か確信めいたように歩を進めていた。 「……シックスがいる」 キャスが歩きながら、着ている外套(がいとう)の前を閉めて言った。 「何を言っているんだ? シックスとはバイオ・ナンバーの本拠地(ほんきょち)で別れただろう? ここにいるはずがない」 シックスとは反帝国組織バイオ・ナンバーの一員である男だ。 彼は、自分の体格を活かした体術を駆使して戦い、それと不思議な力――風を操れる力を持っていた。 アンとキャス2人は、この雪の大陸へ来る前に、シックスともにストリング帝国の軍勢と戦った仲である。 「だが、この感じは間違いないくシックス……彼だ」 キャスは一歩も(ゆず)らず、さらに足を速めた。     
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加