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「おい、待てって。キャスは将軍だったからわからないかもしれないけど、知らない土地ではまず現在位置の確認を――」
アンが言った通り、キャスは元ストリング帝国の将軍だった。
そして、アンはその国の末端の兵士。
アンから見れば、今のキャスの態度は、世間知らずなお嬢様といった感じに映っているのだろう。
「いや、私にはわかる、わかるんだ。こっちのほうに人がいる」
アンにはよく理解できなかったが、キャスがそんな嘘をつく人物ではないことを知っているので、地図をしまってその後についていく。
キャスは、この目の前もほとんど見えない道を、何か確信めいたように歩を進めていた。
「……シックスがいる」
キャスが歩きながら、着ている外套の前を閉めて言った。
「何を言っているんだ? シックスとはバイオ・ナンバーの本拠地で別れただろう? ここにいるはずがない」
シックスとは反帝国組織バイオ・ナンバーの一員である男だ。
彼は、自分の体格を活かした体術を駆使して戦い、それと不思議な力――風を操れる力を持っていた。
アンとキャス2人は、この雪の大陸へ来る前に、シックスともにストリング帝国の軍勢と戦った仲である。
「だが、この感じは間違いないくシックス……彼だ」
キャスは一歩も譲らず、さらに足を速めた。
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