掃除道具置き場

　校舎三階北側のトイレは、幽霊が出るともっぱらの噂だ。
　だからみんな避けているのだけれど、ある日、どうしても遠くのトイレには間に合いそうにないという状態になり、私は一番近かった噂のトイレに駆け込んだ。
　用を足し、何子度もなくてよかったと、胸を撫で下ろしながらトイレの外に出ると、一人の女生徒とすれ違った。
　掃除当番の時は仕方ないから足を踏み入れるけれど、本当に、ここのトレイは誰も使わないのだ。そこにわざわざ入っていくなんて。
　なんだか気になり、振り返る。するとその生徒は一番奥にある掃除道具置き場の前に立ち、扉を開けた。
　先生に掃除でも命じられたのだろうか。
　不思議に思う私の視線の先で、彼女は掃除道具置き場の中に入っていった。
　あんな狭い所に入るなんて、いったい何をしているんだろう。もしかして、置き場を掃除するように言われたの？　でもそれなら扉を閉める必要なんてない。
　もしかして、あれが噂の幽霊？
　もう、そうとしか思えない。でもこの目で見てしまったのに怖さを感じない。ただ募るのは、どうして掃除道具置き場に入るのだろうという疑問だけだ。
　そのうち掃除当番は回ってくる。そうしたら当然、用具を取るためにあの扉開けなきゃならない。それはとても怖いけれど、周りにみんながいる時なら少しは平気かな。
　とりあえず幽霊の行動が気になるけれど、今は確かめず、当番の時を待とう。

掃除道具置き場…完