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「『あ、いた』」
後ろから聞こえてくる声と、スマホの中の声がリンクする。
「柏木くん」
振り向いた先には、柏木くんがあたしと同じようにスマホを耳に当てていた。
まだ、あたしがこうして柏木くんと電話しているなんて、妄想上の出来事じゃないかって現実を信じられない。
「片澤さんとずっと話してみたかった」
スマホを耳から話した彼は、あたしのことを真っ直ぐに見る。
「.......え?」
思いもよらない言葉。
やっぱり、これは妄想上の出来事なんじゃないかって気持ちが強くなる。
「俺と片澤さん、入試の時席が隣だったんだよ」
「え?そうだったっけ.......」
入試のときのことを思い出してみても、隣の席に柏木くんがいたような記憶がない。
隣には、たしか.......。
「これならわかる?」
カバンからメガネを出して、かける。
「.......あ」
記憶の中の隣にいた男の子と目の前の彼の姿が重なる。
「あのとき、なんかすげー緊張しててさ。色々ボロボロ落とす俺に笑顔で話しかけてくれたよな」
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