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あんな風に細やかに主張された女の子の気持ちって、とっても可愛く思える。
だけど、初恋の痛みを未だに振り切れてない孝太君は、きっと何にも気付いてない。
元気を失くしてた横顔を思い出して、私は胸の中で息を吐いた。
いつまでも、実らないものに拘ることないのに。もっと違うところにも目を向けてみればいいのにな。もったいない。
ついそんなお節介なことを考えながら、私は人混みに紛れて歩いていく。
その間、色んな方向に、次から次へと視線が移っていってしまう。
目立つ格好をしてる人が少なくないのだ。学生服だったり、着ぐるみだったり、メイドさんだったり。声を上げて客引きしてる大学関係者の方も、辺りをのんびり見て回ってるお客さんの方も、コスプレしてる人は目に付く。
その中に、着物姿の女の子を発見した。さらさらした髪をおだんごにしてて、腰に白いエプロンを付けてて、まるで昔の時代から女給さんがタイムスリップしてきたみたい。小さく膨らんだ風呂敷を、両手で大切そうに抱えて歩いてる。
ほんの偶然だけど、見つけられたことが嬉しくて、私はその子の元へ駆け寄った。
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