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「りっさちゃーんっ!」
「え……あっ! 弥生ちゃん!」
私が手を振りながら名前を呼ぶと、着物姿の女の子──理沙ちゃんも、すぐ私に気付いて笑ってくれた。
理沙ちゃん。全然似てないけど、律君とは双子の兄妹。私とも、真白君や孝太君よりも付き合いが長い、子どもの頃からの親友だ。
「久しぶりだねぇっ! 元気だった?」
「うんっ。弥生ちゃんも元気そう」
「元気だよぉ。理沙ちゃんは、何か可愛い格好してるね。やっぱり学祭だから?」
「あっ……あのね、模擬店で、皆でこういう格好しようって話になって……着物は借り物だけど……」
慣れない格好に恥じらいがあるのか、あたふたしながら説明してくれる理沙ちゃん。模擬店で動き回ってきたのか、よく見たらおだんごがちょっと乱れてる。
「ね、理沙ちゃん。髪、少し直した方がいいかも。ちょっといじってもいいかなぁ?」
「え、本当? お、お願いします」
「ここじゃ何だから、座れるとこ行こっか」
「うん。じゃあ、こっち」
理沙ちゃんに連れられて、私は近くの校舎の空き教室に入った。ヘアアレンジ用の道具を詰めてあるポーチから櫛を取り出して、理沙ちゃんの髪を梳かしていく。
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