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まあいいや。真白君のことなんか置いといて、とにかく今は理沙ちゃんの髪を最高に可愛く整えてあげることに専念しなくちゃ。
私は慎重に手を動かした。自分の髪をいじる時とはまた違う感覚を楽しみながら、きっちり仕上げていく。
「理沙ちゃんっ。出来たよぉ」
柔らかい髪から手を離した私は、理沙ちゃんに手鏡を渡した。そして美容院の人がやるみたいに、後頭部も見えるよう更にもう一つ大きめの鏡を取り出す。
そしたら、鏡に映った理沙ちゃんの顔がパッと明るくなったから、私もつい嬉しくなって笑う。
「どっか気になるところある? すぐ直すよ」
「ううん、ないっ……あ、可愛いかんざし……」
「あ、これね、買ったばっかの新品なんだけど、まだ一回も使ってないんだ。私より理沙ちゃんの方が似合うからあげちゃうね」
「え!? い、いいよっ。ちゃんと返すから……」
「実はね、買ったのはいいんだけど、私もうこれと似たようなかんざし持っちゃってて。そんな高い物でもないし、良かったら貰ってくれないかなぁ?」
「でも……本当にいいの?」
「もちろん。その方が私も嬉しいな」
「……ありがとう。弥生ちゃん」
鏡の中で微笑む理沙ちゃんは、気に入ってくれたのか、私が整えた髪を何回も違う角度から見直してる。控えめな彩りの花びらが、茶色の髪に淑やかに映えた。
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