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「ね、せっかくだから、外で一緒に写真撮ろっ。あ、でも理沙ちゃんはこれからチェスサークルのとこ行くのかな?」
「そのつもり……なんだけど、さっき、弥生ちゃんに会う前に真白から電話かかってきて、『人のいないところで待ってて』って言われて……」
「え。そうなの?」
「うん……」
風呂敷をぎゅっと抱き締める理沙ちゃん。さっきまでパッと華やいでた表情が、ほんのり曇る。
あ、またやっちゃった。
と、思ったのは一瞬で、「でも」と続いた声には力が通ってた。
「じっと待ってる間に、真白が他の女の子に声かけられてても嫌だから……やっぱり行ってくる」
うつむかないその顔に、迷いは見えない。風呂敷に添えられた左手の薬指には、真白君と同じで汚れ一つ無い指輪が凜と光ってる。
理沙ちゃんは、ちょっと自分に対して後ろ向きになっちゃうところがあるけど、真白君の隣だけは絶対誰にも譲らない。その分、"彼に相応しい自分でいたい"っていう想いが誰よりも強いことは、メイクやヘアケアについて何度も相談された私もよく知ってる。
朝も夜も、真剣に鏡に向き合ってるんだろうな。想像すると微笑ましくて、私も気分が明るくなった。
「じゃあ迎えに行っちゃおっかっ……って、私まで行ったら邪魔になっちゃうね」
「あ……よかったら、弥生ちゃんもついてきてくれないかな? 一緒に来てくれた方が私も心強いし……」
理沙ちゃんが控えめに私の腕を掴んでくる。その力が思った以上に弱かったから、私は「わかった」って答えて頷いた。
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