理沙ちゃん

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 理沙ちゃんと一緒に外に出ると、また賑やかで非日常的な世界へと戻った。波みたいにキャンパス内に広がるさざめきも、軽やかに鼻を通っては抜ける(こう)ばしい匂い達も、私達を明るく歓迎してくれる。 「わぁっ! 何あれっ!」  木陰が広がる中庭に出ると、私の目と興味は一瞬で奪われた。どこまでも広がる庭の、その中心に。狭い生垣に囲まれた、小さな噴水に。 「ここの大学、噴水あるんだねっ! すごーい、なんかオシャレ!」 「うん。ここ、よく人が集まるの。お昼ご飯食べたり、こういうイベントの時は皆でここで写真撮ったり、動画撮ったり」 「本当だ……SNSで映えそうだもんねぇ」  周りをよく見てみると、可愛い格好した女の子の集団や、幸せそうなカップル達が、噴水を背にスマホを構えてる。  私もここで理沙ちゃんと写メ撮ろうかな。そう思ってスマホを手に取ったけど、理沙ちゃんは噴水とも私とも違う方向に顔を向けていた。 「理沙ちゃん? どうしたの?」 「あそこ……」  理沙ちゃんの人差し指が、中庭から続いてるオープンテラスの方に伸びた。  そのテラスの一角を、何人もの人が取り囲んでる。集団の中心に何があるのかは見えないけど、その傍らには"部員に勝ったら豪華景品プレゼント!(数量限定)"と書かれた手作りの看板が確認できた。 「……あれっぽいねぇ。真白君」 「うん……」 「私達も見に行こっか」  スマホをしまい、私も理沙ちゃんと人だかりに紛れに行く。
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