理沙ちゃん

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 群れの中央に最初に見えたのは、黒い駒を掴んだ真っ白な指。  みんなが取り囲んでるのは、チェス盤の上で駒が遊んでるテーブルと、テーブルを挟んで向かい合う二人。その片方、黒い駒を動かしてる方は、やっぱり真白君だった。白い駒の方のプレイヤーは、チェスサークルの部長さんらしい。  ボードゲームに疎い私にも、戦況だけはすぐ掴めた。真白君が無表情に色んな駒を動かしていくのに対して、部長さんは頭を()いて「あー」とか「やべっ」とか言いながら、一つの駒しか動かさないから。  頭に十字架を乗せた白い駒が、黒の大群に追われてる。あの狙われてる駒が多分王様だ。取られちゃいけない"心臓"だ。  追跡をかわしては、また黒の兵に距離を詰められていく、孤独な白の大将。  その逃げ戦も長くは続かなかった。白い手に操られた黒い王様が、軽やかに白い王様の正面に立つ。 「チェックメイト」  淡泊な声がトドメの言葉を放った。 「ちっ……くしょーっ! 参りましたぁっ!」  そう言って悔しそうに頭を下げたのは、部長さんの方で。  その直後、周りからは歓声と拍手が沸き起こった。その空気に()されて、私もつい拍手を贈ってしまう。 「真白君、勝っちゃったね……すごいねぇ」  私は理沙ちゃんに話しかけたつもりだったけど、何の反応も返ってこない。  横を見ると、理沙ちゃんは、真白君の方を見たまま動かない。  あ、だめだ。顔がぽーっとなっちゃってる。惚れ直したかな、こりゃ。
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