49人が本棚に入れています
本棚に追加
負けちゃった部長さんが、真白君に御祝儀袋みたいな白い封筒を渡す。あれが“豪華な景品”なのかな。お金なら“景品”より“賞金”って書いた方が正しい気がするけど。
平然と封筒を受け取った真白君は、ふと顔をこっちに向ける。
次の瞬間、珍しいものが見れた。
ガラス玉じゃなくなった、生気のある二つの瞳を見開いて。引き結んでた口もポカンと開けて。ただ一点を、私の隣を凝視しながら、真白君の表情が固まった。まるで呆気に取られたように。
真白君はそのまま早足で近づいてくる。そしたら、何故か私を盾にするみたいに、理沙ちゃんがサッと私の後ろに隠れた。
「え、理沙ちゃん? どうしたの?」
「真白、怒ってる……」
「へ? お、怒ってる?」
「何してるの」
意識を外してた角度から、真冬を思わせるような冷たい声が落ちてきた。
さっきまでチェスの試合を観戦してた人達の視線が、何やらこっちに集まってて。
気付けば私の真横にいた真白君は、他には目もくれず私達を──いや、ピンポイントで理沙ちゃんを睨んでた。
「りっちゃん。ここで何してるの」
「…………真白が、ここにいるって言ってたから、その、会いに……」
「人のいないところで待っててって言ったよね。何で約束破るの?」
「だって……寂しかったんだもん」
周りの注目を浴びてることには気付いてないのかもしれない。うつむいたままの理沙ちゃんは、震えそうな言葉でそう反論する。
最初のコメントを投稿しよう!