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「あ。あのさぁ、真白君っ」
伸ばされた白い手が理沙ちゃんに届く前に、私はわざとらしいほど明るくした声で割り込んだ。
「何?」
途端に熱を冷ました真白君の瞳が、私を映す。
余計な模様の無い精巧なガラス玉に捕まると、ゾッとしてしまう。
これと真正面から向き合うの、怖いな。それでも負けじと私は笑ってみせる。
「さっきはおめでとっ。それ、さっき貰ってた"豪華な景品"だよね?」
私が指したのは、真白君が握ってる封筒だった。さっき、チェスサークルの部長さんから渡されてたもの。
「中、何が入ってるの? お金とか?」
「違う。食事券。ペアの」
「そうなんだ? どこのお店の?」
「どこ……名前何だっけ」
真白君は、煩わしそうに封筒を開ける。
そんなやり取りをしてる間に、チェスサークルの方にはまた次の挑戦者がやって来たみたいだった。興奮冷めやらない周りの視線と興味は、また新しく始まる試合の方へと移っていく。
よしよし、いい感じ。この様子だと、もう注目を浴びなくてもいいみたい。
「えっと……"バルカネスト"」
「え!?」
封筒の中身を取り出した真白君がそう呟いた途端、理沙ちゃんが顔を上げた。
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