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「そ、それって、あそこのっ……!?」
「うん。あのコンサートホールの隣にできたレストラン」
私から手を離して、飛び出しそうな瞳であわあわと真白君を見上げる理沙ちゃんの頭に、白い手が優しく乗っかる。
"バルカネスト"。そう言えばその名前、私も最近どっかで目にしたような。
「あ。そのお店って、もしかして最近駅の近くにオープンしたところ? 確かグルメ雑誌の最新号に載ってたような……」
「うんっ! 今度ね、真白と一緒に、古賀茜のコンサート聴きに行くんだけど、その会場の隣にあるのっ。オシャレで高そうなところだけど、いつか行ってみたいねって話してて……」
私にそう説明してくれる理沙ちゃんの顔が、興奮気味に明るくなっていく。
古賀茜って、理沙ちゃんが子どもの頃から好きなピアニストだ。そっか、今度その人のコンサートが開かれる会場の隣に、そのレストランがあるのか。
そこまでわかれば霧が晴れるのは早かった。
「すぐ迎えに行けなくてごめんね。他の景品はそれなりに数あったんだけど、これだけ"先着一名様"ってなってたから」
「そうだったんだ……」
「コンサート終わったら、その帰りに行こうね」
「うんっ! ありがとう、真白っ」
真白君が穏やかな手つきで頭を撫でると、理沙ちゃんは今日一番の笑顔を咲かせた。
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