理沙ちゃん

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 でもその頬に白い手が伸びて、強引に上を向かせる。二人とも、一度は見つめ合うけど、理沙ちゃんはすぐに目を泳がせた。落ち着きかけてた顔を、また真っ赤にさせて。  そんな理沙ちゃんをまじまじと見てた真白君は、一回だけ小さい息を吐く。そして突然黒いコートを脱ぐと、それを理沙ちゃんの肩に被せた。 「そんな格好してたら寒いよ。これ着てて」 「え……で、でも、そしたら真白が寒いよ?」 「平気。りっちゃんほど弱くないから」 「……ありがとう」  理沙ちゃんは素直に着物の上からコートを羽織る。でもそれだけじゃ気が済まなかったのか、真白君は更にコートのボタンまで留め出した。  どうしよう。ここら辺でお邪魔虫は退散した方がいいのかな。このむず(がゆ)い雰囲気、すっかり"二人の世界"だしな。  迷いつつ、私は少しずつ二人と距離を取る。  でもその直後に何かが背中にぶつかってきた。 「わっ!?」  突然の痛みと衝撃に混乱しながら、足が耐えきれなくて、私は前のめりに倒れ込む。 「いったぁっ……!」 「弥生ちゃんっ! 大丈夫!?」  理沙ちゃんがすぐに寄り添ってくれて、私の身体を起こすのを手伝ってくれた。 「あ、ありがと、理沙ちゃん……」  笑ってはみたものの、何が起きたのかわからない。けど、幸いどこにも鈍い痛みはない。ショルダーバッグのチャックもしっかり閉じてたお陰で、中身もぶちまけてはいなかった。
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