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後ろから見ても派手な金髪の男の子は、喧騒から離れた人気のない校舎裏に進んでいった。
見失わないよう、私も無我夢中で追いかける。その間、私の手の中で、スマホが何度も短い音が鳴らしていた。
「結菜っ!」
木陰だけが広がる寂しい場所で、男の子の手がついに女の子の腕を捕えた。
捕まった女の子は、足を止めはしたものの、頭を何度も横に動かす。
「奏、離してっ……ほっといて……」
「そんなことできるかよっ! 何でいきなり泣き出すんだっ!?」
「お願いっ……今は一人にしてっ……!」
女の子は声を震わせながらまだ泣いてて、そんな彼女に男の子は困惑してて。
どうしよう。つい追いかけてきちゃったけど、とても声をかけられそうな雰囲気じゃない。かといって私もスマホを諦めるわけにはいかないし、でもこのまま黙ってじっと立ってても不気味がられそうだし。どうしよう。
迷ってると、男の子の方から激しいメロディが鳴り出した。舌打ちしながら上着のポケットを漁った男の子は、取り出したスマホを耳にあてる。うなだれた女の子の腕をしっかり掴んだまま。
「あー、悪い。今、英文学科の棟の校舎裏にいんだけど……」
困り果てたような表情と声のまま、男の子は電話の向こうの誰かと話し出す。
そのタイミングで、また私の手の中でスマホが鳴った。
音はすぐに止んだけど、うつむいてた女の子はバッと顔を上げた。私と目が合うと、当然びっくりした表情を作るから、私は笑ってみせるしかなかった。
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