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ずっと律君に意識を集中させてたせいで、私はスマホをしまってからやっと気付いた。すぐ傍から突き刺さってきてる視線に。
さっきまでスマホで誰かと話してた金髪の男の子も、彼に捕まってる女の子も、なにやら驚いた表情で私を見てる。
「あのぉ……何ですか?」
「もしかして……“弥生”ちゃん?」
「え? な、何で、私の名前……」
「やっぱりっ! 律の彼女だろ?」
「えっ!?」
男の子の口からいきなり出てきた愛おしい名前に、単純な私はすぐ反応してしまう。
「律君のこと知ってるんですか!?」
「知ってるも何も、俺ら律と同じサークルだし。っつっても、俺ら二人とも、学年はあいつより一個上だけどな」
「律君の先輩さんですか……」
「ああ。だから弥生ちゃんの名前も律からよく聞いてて……俺のことは律から聞いたことあるかな? 倉本奏って言うんだけど」
「ああっ! "奏さん"! 律君から何回か聞いたことありますっ。同じサークルに、すっごく尊敬してる先輩がいるって」
律君との話の中に何度か出てきた人物像と、実際に目の前に立ってる人とを、私は頭の中で照らし合わせる。
奏さん。律君がよく、“面倒見がよくて、頼りがいのある気の利く先輩だ”って話してくれる人。そういえば、見た目が派手で、最初会った時はチャラそうな人だと思ったとも言ってたっけ。
この人が奏さん。覚えておかなきゃ。
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