奏さんと結菜さん

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「律……わざわざ来てくれたんだな。こっちはいいから彼女迎えに行けって言ったのに」  呼吸の調子を戻しかけてた律君の肩に、気遣わしげな奏さんの手が優しく触れる。 「っつっても、弥生ちゃんここにいるから結果オーライ……か?」 「はは。困ってる先輩ほったらかしにしてるようじゃ、弥生に愛想尽かされますしね」 「悪かったな、律……弥生ちゃんも」  奏さんは、律君と、それから私にも、微笑みかけてくれる。さっきまでの凄みを収めて。 「気を遣わせたよな。さっき律と電話してた時、笑ってたけど元気ない感じだったし」 「えっ……」  お腹の底を、冷えたものが通り過ぎる。  私は驚いた。あの時、いつも通りに笑えてる自信があったのに、まさか初対面のこの人に見透かされてたなんて。 「巻き込んで本当にごめん。実は律には、俺の都合に付き合ってもらってたんだ」 「都合?」 「……告白の」  奏さんは、さっきの気迫とは打って変わって、優しい眼差しを結菜さんに向ける。 「俺が呼び出したら感付かれると思ったから、律に呼び出してもらって。でも、呼び出した場所に行く前に律とそのこと話してんの、偶然結菜に聞かれて……そしたらいきなり泣き出されて、逃げ出されて……それで追いかけっこしてたってわけ」 「……ごめんなさい」  重たい謝罪の言葉と一緒に、結菜さんは奏さんに頭を下げた。
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