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「いきなり逃げたりして、変な態度ばっかり取っちゃって……でも、奏には悪いけど……私、本当に、ショックだったから……」
「それ、さっきも言ってたよな。何がショックだったんだ?」
「……私を呼び出したのが……本当は、奏だったこと……」
涙が乾いてない瞳で、結菜さんが見上げた。奏さんじゃなくて、律君を。
「……『話があるから』って呼び出された時ね、ちょっとだけ自惚れちゃったの。もしかしたら彼女と別れたのかもって……」
匂いのない風だけが、緩やかに飛んでいく。
「私……ずっと、律のこと好きだったから……」
「えぇぇぇぇ!?」
誰よりも先に、私が大声を上げてしまった。だって我慢できなかった。
「ゆ、結菜さん、律君のこと……!?」
「うん……ごめんね。弥生ちゃんがいるのは知ってたし、二人の邪魔しようとかは思ってなかったんだけど……惹かれていくの、止められなくて……」
涙を抑えた結菜さんの声が、また揺らぐ。
「だから、律が私を呼び出したの、奏の為だったんだって知った時……すごくショックだった」
そこまで聞いて、やっと流れを理解した私は、言葉に詰まってしまった。
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