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「ね、ところで今日、理沙ちゃんは? 一緒じゃないなんて珍しいね」
「りっちゃんは同じ学科の人と模擬店出すって。でもそろそろ交代の時間だから、これから会いに行くところ」
りっちゃん。その名前を口に出した途端、硬質だった声に、冷えついてた瞳に、いきなり柔らかい温度が灯った。
なるほど。だから真白君はこのタイミングで来たんだ。
真白君の、透明感のありすぎる左手。その薬指に堂々と光る、くすみも汚れもない指輪を見て、私はついニンマリしてしまう。
「ふふ。理沙ちゃん、元気にしてる?」
「うん。元気」
「そっか。理沙ちゃんにも会いたいな。もうしばらく会えてないもんなぁ……」
「忙しいんでしょ? しょうがないね」
「うん、まあそうなんだけど……」
「あーっ! 真白君、発見っ!」
突然だった。私達の会話に、大きな声が被さったのは。
颯爽と駆けつけてきた俊足。何やら上機嫌な人懐っこい笑顔。真白君へと向けられたそれは、私にも見覚えのある男の子のものだった。
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