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掬い上げるように、律君の手が、私の手をそっと握る。
「本当、弥生がいたら安心できねーな」
「へ? それ、どういう……」
「どんどんいい女になっていくから。よそ見されないように、俺も頑張って成長していかないとって、これでも毎日必死なんだけど」
「そ、それ、私のセリフっ! 律君、顔広いし、女の子の友達も多いし、どんどん大人っぽくなって……カッコよくなってくから、ちっとも気が抜けないよっ」
突拍子もないことを言い出した律君に、私も対抗する。でも何の言い争いなのか訳がわからなくて、二人で顔を見合わせて笑った。
子どもの頃からずっと隣にい続けてきた。そのせいか、「一生、一人でいいの?」とか、「たまには他所にも目を向けないと、世界が広がらないよ」とか、無神経なこと言ってくる子もたまにいる。
でもきっと、そんなこと言ってくる子達には一生わからない。律君によそ見されないようにって、そのために努力する時間が、どれだけ楽しいものなのか。その分、律君と心が通い合った瞬間が、どれだけ幸せなものなのか。
明るく輝く光のような人。これから先も、きっと貴方は広い世界で、色んな人と出逢いながら、成長しながら生きていく。数多い出逢いの中で、貴方がよそ見をする日も来るかもしれない。
だけど、そのたびにまた私の方を見てくれるように、私は私で心ごと自分を磨き続けていたい。何度でも、心を傾けてもらえるように。
そうやって頑張れる日々が、一緒にいられる一瞬一瞬が、いつか振り返った時に“永遠”になっていればいいな。
「腹も膨れたし、今度はイベントの方、遊びに行くかっ!」
「うんっ!」
笑い合った律君と私は、また二人で歩き出す。手を繋いで。お互いに、心地のいい距離とペースで。
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