事情 side遼太

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 冗談半分の口調で返しながら、今度は俺が彼女のグラスに注ぐ。 「いやだ、失礼しちゃう。私は遼太としか寝ないわよ」  アハハと笑いながらグラスを合わせた。  同級生達の話をしたり仕事の話をしたり。なんだ菊乃、いつもと変わらないじゃないか。  と思った時だった。ふと、グラスを置いた菊乃が泣き出した。 「菊乃?」 「遼太、お願いがあるの」 「どうした、菊乃。俺に出来る事ならーー」  テーブルを回って、顔を覆って泣く菊乃の側に行った次の瞬間。 ――!?  菊乃が俺に抱きついた。 「き、きくの!?」  ただならぬ雰囲気に、無下に引き離す訳にもいかず。 「どうしたんだよ」
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