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キスマークを付けられたと思われる首筋を擦りながら眉根を寄せる俺に、菊乃がまだ少し涙の跡が残る目で笑いかけた。
「好きな子が出来たのね?」
手にしていた箸が止まってしまう。不覚にも、固まってしまった。
「珍しい、遼太がそんな風になるの」
「うっせー」
菊乃が笑う。
「お前こそ、今幸せなんじゃないのかよ」
「……幸せよ」
菊乃がフッと微笑んだ。
「女は、自分が好きで好きで堪らない人と一緒になるより、自分をうーんと愛してくれる人と一緒になる方が幸せなんだから」
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