あたしが見たものは

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 勉強しよう、と机に向かっても、教科書の文字も、問題集の問題も全然理解出来ない。  夕焼けのオレンジ色の光に包まれた教室で、彩乃ちゃんが話していた事が頭から離れなくて。  そのままシャープペンを置いてベッドにうつぶせにゴロン。  そういえば、遼ちゃんが高校生の時は部活が忙しくて、ほとんど遊んでもらえなかった。家にいても、女のコを連れてきてる事が多かったから。  あたし、やっぱり遼ちゃんと同じくらいの年だったら良かった。  枕に顔を埋めた時、ガシャガシャッと自転車をしまう音が外から聞こえた。  遼ちゃんが帰ってきた。いつもなら窓から顔を出すけれど、今は遼ちゃんの顔を見たら泣いてしまいそう。 「ひよりー」  あたしはママの呼ぶ声に顔を上げた。
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