母宛の手紙

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 私、飯田茜の父親である飯田一郎は、私が十歳の時に母と私を捨てた。それ以来、私は一度も父に会っていない。父が出て行った理由は聞かされなかったし、私から聞いてもいない。プライドの高い母の面目を保つため、それを聞いていけないことは幼いながら本能的に察知し聞かなかったのだ。母が私に涙を見せたことなど、ただの一度も、ない。姓も「飯田」を名乗り続けた。 私は手紙を読み進めた。
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