#1 同級生なんてこわくない

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「駕木くんの冴えなさったら、女の子にご飯をおごろうとお店にはいったんだけど、お金が足りないことに気づいて、あわててATMに駆けこんでも、ご利用の金融機関がシステム調整をしていて下ろせず、結局全額女の子に出してもらったあげく、後日お金渡すからとペコペコ頭下げて別れるくらい冴えてないの」 「わあ、冴えてない!?」 「それどころか、待ち合わせの時間には電車の人身事故で必ず遅れるし、たとえ付き合えたとしても、記念日には2、3日してから気がつくし、コンビニで買ってきたしょうもない景品を渡したり、たとえ結婚できたとしても、面白くもない上司の飲みに毎日付き合わされるわ、後輩にはどんどん先を越されて万年ヒラだわ、奥さんには愛想尽かされて離婚されるわ、慰謝料を請求されるわ、それなのに別れた奥さんの近くに家を借りたり、車のナンバーを同じにしてみたり、偶然を装って顔を合わせるなどのストーカー行為を繰り返して、ついには告訴されて会社もクビ! そんな人生が待っているのよ!」 「重たっ! お先真っ暗じゃん!?」 「そうなの!」  香坂は、駕木に向かってびしっと人さし指を突きだした。 「そんなあなたが、芸能活動をやっている超絶美少女といやらしいことできちゃうってゆうチャンスなんて、天地創造・宇宙開闢なみの出来事なの!」 「ビックバンの瀬戸際かよ!?」 「さあわかったら、とっとと服を脱いで、一生黙ってますと誓いなさい!」 「はい、誓います!」 「そうよ、駕木くん。あなたみたいな凡人は、それで正解」  香坂は優しくつぶやくと、体躯をしなやかに動かして、ブラのホックに手を掛けた。 「いや、だから違うってば」  またしても冷静な駕木に、香坂はすっかり興を殺がれて、歯噛みした。
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