#2 幼馴染なんてこわくない

1/20
前へ
/68ページ
次へ

#2 幼馴染なんてこわくない

 起立! 礼! 着席! という日直の声に従うと、駕木(のぎ)は机に突っ伏した。  早朝からの雨で、服がベタついている。  気圧も低くて気怠い。  くわえて昨日のニワトリ騒動の疲労が、回復していなかった。  逃げたニワトリは、奇跡的に全羽捕まえることができた。  山本の長年の経験と勘がものをいったが――  駕木も路上で奮闘して、なんとか1羽捕獲することができた。  もとはといえば、追突事故にあって荷台のケージが壊れたのが原因だった。  幸い車のほうは、軽くオカマを掘られた程度だったので、走行可能だった。  しかし、警察や事故相手や保険屋と話をつけた山本の父は、ひどく疲れていた。  それでも途中で投げ出すわけにもいかない。  壊れたケージを修理して、捕まえたニワトリを入れから、ようやく車は出発した。  山本の家に着いたあとも、鶏舎の掃除をしたり、砂を替えたりと大変だった。   駕木が自宅に帰り着いたのは、日が暮れてからだった。  お風呂で汗と埃を流すと、ずいぶんさっぱりした。  きょう1日のことが夢だったようにさえ思えた。  なにはともあれ、無事に終わってよかったと、駕木がバッグを開けると――  ニワトリが1羽、すやすや眠っていた。 (――――!!?!?)  どうやって入ったのか、いつ入ったのかまるでわからない。  あわてて電話をすると、山本は笑っていた。  結局、今日はもう遅いから、明日の放課後に持っていくことになった。  とりあえず段ボールとタオルを用意して、眠るニワトリを入れておいた。  しかし、小動物がいるという緊張からか、鶏舎の掃除に疲れたからか――  それとも、香坂との会話が、頭のなかで何度も繰り替えされたからか――  頭痛がして、寝つけなかった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加