#2 幼馴染なんてこわくない

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  * 「よう、駕木! 散々だったな!」  清々しい大声で、駕木の眠りを遮ったのは山本である。  側頭部の刈り込みまで、昨日より青くみえる。  また自前のバリカンでも使ったのだろう。 「十二(とうじ)こそ、1限目ぎりぎりだったじゃんか」 「また夜更かししちまったよ!」  また新作AVでもチェックしていたのだろう。  身だしなみは女優への敬意だ、というわけのわからない自論をもっている。  あれだけ働いたあとで、よくそんな元気があったなと、駕木も感心する。 「ニワトリ、まだ眠ってたよ」 「なんだ、てっきり鳴き声に叩き起こされて、寝不足かと思ったぞ」 「あいつも疲れてたんじゃないかな?」 「ふーん。で、3限目の宿題(アレ)はどうかね?」 「ほら、これだろ」  わかっていたように、駕木は数学のノートを山本に手渡した。 「いつもこれくらい、素直に渡してくれたいいんだがな!」 「口が減らないんだったら、返してくれていいんだぞ」 「いやー駕木くん、面目ない! 首の皮が繋がった!」  華麗な転身で、山本はそそくさと席にもどると、ノートを写しはじめた。  駕木はさっさと渡して、授業まで少しでも眠りたかったのだ。  ふたたび突っ伏して、安眠をむさぼろうとしていると―― 「おはよう、駕木くん」 「んあ?」  うなだれたまま気のない返事をした駕木だったが――  聞き覚えのある声にハッとして、顔をあげる。  香坂間継が立っていた。  早朝の仕事でもあったのか、たった今登校してきたようである。 「お……おはよう」  ようやく挨拶を返すと、香坂は優しく微笑んだ。
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