#2 幼馴染なんてこわくない

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 駕木は絶句して、硬直する。  クラスの皆も一様に、あんぐりと口を開けて固まってしまった。  香坂は、駕木の頬にそっと触れた。 「返事を聞かせて。まだるっこしいの嫌いよ」 「う? ほ! へ??」  混乱の渕に落とされ、挙動不審になる駕木。  香坂に触れられて、一時停止(フリーズ)が解除されたのか、手足をばたつかせる。  と―― 「あのう、宗教勧誘ですかぁ?」  素っ頓狂なことを言って割ってはいったのは、家込逢澄(かごめあいす)だった。  空気の読めない性格の家込には、教室のフリーズは効かなかったようである。 「あ、アイス?」  駕木とは家も隣で、物心ついたときから一緒であった。  おっとりしてはいるが、家込のほうが誕生日が早かったせいか、いつも姉の空気を醸していた。  パクパクと不忍池の鯉のようにふためく駕木が振り返ると――  香坂も家込を認めて、少し驚いたような顔をしていた。 「家込さん? ――なるほど、そうゆうこと」 「無人、すぐ泣くと思う」 「そうなの?」 「『泣き虫なきと』って言われてて」 「へぇ、かわいい~」 「ちょっと――アイス……」  暴露話をはじめる家込に、わけがわからなすぎて本当に泣けてきてしまう駕木。 「いまはアイスの天然に構ってる場合じゃないんだって」 「そうよ、駕木くん」  何故だか香坂も同意して――いやむしろ、睨むような顔をして、 「家込さんがいまどれだけのことをしているのか、駕木くんにはわかってないんでしょうね!」 「ええっ!? なんでぼくが――」 「あなたいま、ふたりの女の子に恥かかせてるの」 「はあっ!?」  またしても混乱の底に叩き落とされる駕木。  もう何がなんだかさっぱりであった。  そこへ、2限目の担当教員、古文の田所が顔を出した。
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