#2 幼馴染なんてこわくない

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「よーし、授業はじめるぞー、席につけー」  まだ眠そうにしながら、のっそりと教卓に荷物をおく田所だったが、皆が香坂を向いてフリーズしているのに気づくとようやく、異変を察知した。 「なんだ、どうした?」  だれに言うでもなくぼやくと、クラス委員の三輪来乃実(みつわこのみ)が立ち上がった。 「不純異性交遊です! 痴情もつれちゃってます!」  とげとげしく告発する三輪だったが、田所はいたって冷静だった。 「高校生なんだから、そういうこともあるだろ」 「先生、それ教師の発言としてどうなんすか?」 「どうもこうもあるか、オレだって、勉強だけ教えてるほうが楽なんだ」  田所が投げやりに返すと、  黙っていたクラスメイトたちの矛先が田所に向かった。 「だって香坂ですよ!」 「なんでだああああおおおおええああああああ」 「これSNSで呟いたらまずよね」 「駕木? あんなやついた?」  堰を切った情念があふれだし、いよいよ収集がつかなくなってしまった。  こうなっては田所も、授業の進行をあきらめざるをえなかった。 「香坂、家込、駕木、ちょっと生徒指導室に行くぞ。三輪、悪りぃけど教室は任せた!」  田所は渦中の3人を引き連れて教室から出ていった。  残されたクラスメイトたちは、憶測と不満をだらだらと宣っていたが――  怒髪天の三輪が黒板を爪でひっかくと、みな耳を塞いで悶絶した。 「自習しろクズども! 騒いだら殺すぞ!」  三輪の剣幕に、クラスメイトは押し黙った。  だが納得はいかない様子で、みなはぶつくさいっている。  それぞれの妄想を膨らませ――自習するものは誰もいなかった。
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