#2 幼馴染なんてこわくない

8/20
前へ
/68ページ
次へ
「駕木くんはどこまでできるの? 触ったり、撫でたりもするの?」 「ちょっ、香坂何言ってんだよ、アイスとはそんなんじゃ」 「撫でるだけじゃなくて、チューだってできるもん」 「はあっ!? あ、それあれだろ? 小さいときにしたとかっていう。そんなのカウントすのは、どうかと思うぞ!」 「チューまで!? 信じられない!」 「え、そんなに驚くこと? 子供のチューくらい!」 「無人はすごいんです」 「また誤解を生むようなこと」 「駕木くんって、そんなに愛されてるの? 想像以上だわ」 「そうなんです」 「そうだったの!?」  思いがけず家込から愛の告白を受けた気がして、血がのぼる駕木。  それでも家込と香坂は、構わず続けた。 「無人は渡しません、わたしたちで何とかします」 「いつまでも隠し通せることじゃないでしょ?」 「なんとかしてみせます」 「駕木くんに自由はないの? かれにも人生を選ばせてあげるべきじゃない?」 「それはぁ……」  形勢が押されたのか、家込が気まずそうに視線を逸らした。  香坂は、まっすぐに家込を見つめていた。 「家込さんが、駕木くんの幸福に自信があるんだったら、全部告白すべきよ。 じゃないと――わたしが奪っちゃうから」 「だ、ダメです!」 「じゃあ逆に訊くけど、家込ちゃんはわたしのこと、どれだけ知ってる?」 「…………」 「それを知ってからでも、遅くはないよね?」 「無人に、すべて捧げられるんですかぁ」 「わたしこれで結構、尽くすタイプなの。零か百。はっきりしてるでしょ?」 「むうん……」  家込が煮詰まってしまった。  駕木もふたりの女性から告白を受けている現状は、まるでドラマか冗談のようだが、なにをどう言ったらいいのかわからず、まごついていた。  すると、生徒指導室の外から「くっくっく」と忍び笑いが響いてきた。  3人がいぶかしげに振り返ると、扉が開いて生徒会長の東郷湊(とうごうみなと)があらわれた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加