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#1 同級生なんてこわくない
駕木無人は固まった。
自動販売機の前に屈んで、ゴミ箱の裏を漁っていた駕木は――
さぞ滑稽に見えただろうと顔を赤らめた。
同級生の香坂間継と目があったのだ。
互いに知らないフリでもすれば良かったが、目があった瞬間に、ふたりははっと息を呑んだ。
初夏の日差しのもとでは、いくら香坂がサングラスを掛けていたとしても、間違えようがない。
そして駕木も、日曜日だというのに高校指定のジャージを着ていた。
白昼堂々、という言葉が駕木の頭をよぎった。
香坂が立っているのは、朽ちかけたラブホテルの前だったのだ。
駕木が固まっていると、ホテルの奥から男が現れた。
外国人らしき、むつけき大男である。
男は駕木を一瞥してから、のそりと香坂を覗いた。
「先に行ってて」
香坂がそういうと、男は黙ったまま、どこかへ行ってしまった。
芸能界、ホテル、外国人――
3つの言葉が渦を巻いて、駕木のちっぽけな自尊心を殺しにかかっていた。
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